※この話は映画「アンダー・ワールド」が元になっています。
そういった話が嫌いな方。映画のイメージを壊されたくない方は読まないで下さい。
お願い致します;
なお、映画の性質上、流血や残酷なシーンの描写がありますのでご注意下さい。




ダーク・ワールド

千年もの長きに渡り、吸血鬼一族(ヴァンパイア)と人狼一族(ワーウルフ)との戦いは
続いていた。
何故、戦いが始まったのか知る者はほとんどいなくなってしまった。
お互いの種族が滅ぶまで、闘い、殺し合うのが闇の定めである。
しかし、その不毛な闘いに終止符がうたれようとしていた。
不死者の末裔である人間の存在が明らかとなったのだ。
その人間を手に入れた一族がこの闘いに勝利を治める事になるだろう。
一刻も早く、その人間を手に入れなければならない。
もし、敵対する一族に奪われるような事になれば…
その人間を抹殺するしかない…


『すっかり遅くなっちゃったな〜…』
香藤洋二は息をつきながら、少し早足に帰路の道を歩いていた。
香藤は近くの総合病院に勤める見習い医者で、今日も帰る直前になって急患が担ぎこまれ、
その患者の手術に立合っていた為、帰宅する時間が遅くなってしまったのである。
だからといって香藤は立合わなければよかった、などとは思わない。
まだ、見習いの身なのだから、たくさんの手術や診察を体験して、少しでも自分の医者と
しての腕を磨かねばならない、と考えているからだ。
その証拠に
『今日の手術での小林先生の縫合の速さと正確さは見事だったな』
と、香藤の頭は今日の病院での経験を反芻してばかりだった。
そんな時、香藤は周囲が異常な程の静けさに包まれている事に気付く。
とうの昔に日付けは変わっており、真夜中独特の静寂さが降りている。通りを照らす街灯
の数は少なく、その明かりの輪から離れると、たちまち闇に包まれる。
通りには人っ子一人いなかった。
人どころかノラ犬やノラ猫の姿もない。
酔っぱらいやうるさく騒ぐ不良達もいなかった。
『…なんか…静かすぎないか…?』
いつもの見なれた帰り道の景色なのに、香藤は妙な違和感を覚えた。
空をふっと見上げると、満月が青白い光を放って浮かんでいる。
その冷たい美しさに、香藤は背筋がぞくりとした。
『どうかしてる、俺は…らしくないぞ…』
自覚しているが、香藤は陽気で楽観的な性格である。その自分がやけに神経質になってい
るのを感じて自分でもおかしく思う。
「はっ」
気分を変えようと香藤が小さく声を出した時だった。自分が歩いている道の先に奇妙な影
が立っている事に気付く。
よく見えないが、全身毛に覆われているようなので、着ぐるみをかぶった大男かと香藤は
思った。
『こんな時間に着ぐるみなんか着てどこ行くんだろ?それにしてもでかいな』
次の瞬間、辺りに恐ろしいまでの咆哮が轟いた。
目の前の大男が放つ咆哮である。
人間のものでも、ましてや、人工的なものでもなかった。
大気を揺るがす巨大な野性の声に、香藤は全身が泡立ち、頭の中が真っ白になる。
二本足で立っているが、大男は人間の顔をしていなかった。
狼のような長く突き出た口をしており、その口は頬まで裂けている。口の中には(それが
口と呼べるものなら)鋭い牙が何重にもなって並んでいた。
唾液が長く垂れ下がり、それが息を吐く度に空気が白く濁る。
模型と生き物と毎日接している香藤には、それが人工物ではないと分かった。
これは生きている。
ぬいぐるみではなく「生き物」なのだ!
その訳の分からない「生き物」が香藤に向かって突進してくる。
だが、香藤は微動だにしなかった。
頭の中がパニックに陥っていて動けなかったのである。
「生き物」が香藤に手の届く距離まで迫った時、香藤の目の前に闇が降りてきた。
そう香藤は感じたが、すぐに黒い影が自分の目の前に立ったのだと分かった。
今度の影は黒いロングコートを着た人間の後ろ姿に見えるが、そうではないかもしれない。
香藤がやけに冷静に考えていると、ゆっくりとその影が振り向いた。
今度の影は人間の顔をしていた。
それも、恐ろしく美しい男だった。
黒髪に透き通るような白い肌をしており、赤い模様を頬につけている。
いや、赤い模様と思ったのは、血飛沫だった。
ぐちゃ、というにぶい音とともに、香藤に突進していた毛むくじゃらの「生き物」が、男
の後ろで地面に崩れ落ちる。
その身体は真っ二つに切られ、赤い血を地面に広がらせていた。
振り向いた美しい男は、血塗られた剣を握っている。
この男があの毛むくじゃらの「生き物」を斬ったのだ。
不思議と香藤は恐怖を感じなかった。
あまりに現実とかけ離れた出来事に、頭が麻痺していたのかもしれない。
『…綺麗な…人だな…』
場違いにも、香藤は目の前の男に見愡れてしまった。
全身黒づくめの服を着ていて、美しい黒髪に、漆黒の闇を思わせる瞳をしている。
香藤を見つめるその瞳は、一切の感情が削ぎ落とされているかのごとく、冷たく、無機質
だった。
青白い今夜の月のように…
白い肌も美しいと思うが、どこか無機質だった。体温を感じないのである。
そして、その肌に上に残る真紅の色。
この世にその色しか存在しなくなったのではないか、と錯覚する程、鮮明で、血よりも紅く
心に焼き付く色だった。
香藤は男の頬に爪痕がある事に気付いた。返り血だけでなく、怪我をしていたのだ。
男から目を離さず、香藤はポケットからハンカチを取り出し、男の頬の血を拭う。
「…怪我…したの…?大丈夫…?」
小さな声で香藤が尋ねると、男の無機質だった瞳に揺らぎが走ったのが見えた。
しかし、それは一瞬で、男は何かに気付き、後ろを振り返った。
すぐに香藤を見つめ直し
「来い」
と声をかけて香藤の腕を掴んだ。
『あ、良い声だな〜』
またしても香藤は場違いにも、男の声に聞き惚れた。
が、次の瞬間、香藤の身体は大きく空を飛び上がったので、驚愕してそんな感情は消し飛ん
だ。
「えっ…ええ〜!」
腕を掴んだ男が香藤の身体を抱えて空を飛び上がっているのだ。
何度か大きく地面をバウンドして飛び上がると、あるビルの屋上に着地する。
香藤はすっかり腰が抜けて、コンクリートの上にへたりこんでしまった。
顔を上げると、美しい男が自分を見つめる瞳とかち合う。
その瞳から揺らぎは消えていた。
気がつくと、香藤は空を見つめていた。
目の前に立っていた男の姿がこつ然消えたのである。
「…あ…」
ふらつきながらも香藤は立ち上がった。
一体、何だったのだろう…?
夢か…?
いたずらな月が見せた夢か…?
だが、香藤の手には血のついたハンカチが握られている。
『あの人は一体…』
答を求めて空を見上げても、青白い月が浮かぶばかりである。
香藤は月を見ていたが、その心は先程の美しい男の姿で占められていた。

「やられたか…」
明かりのない部屋の中で、男が呟いた。
「ヴァンパイア一族の処刑人が現れたようです」
「…という事は、本物である可能性が高いな。情報はどれぐらい残っている?」
「こちらに転送する前に処刑人に抹消されましたので、前回の分までです」
「あの時間で情報の抹消まで行うとは、かなり凄腕の処刑人だな」
「はい…」
「岩城か…?」
「…おそらく…」
「ヴァンパイア随一の処刑人を出してくるとは…ますます、本物である可能性が高いな…」
男は無気味な笑みを浮かべた。




H21.1.20

先日、「アンダー・ワールド」って映画を観賞しまして、その映画のヒロインの相手の男性
の吹き替えを三木さんが演じてらして。
そのヒロインがヴァンパイアで、黒髪でクールビューティーで。
これは妄想しろって事ですね!と思いました。声だけで萌萌です!
し、しかし、いかんせん持久力がもちません!原作「春抱き」に飢えてるって事を改めて思
い知らされた気分です!焦らしプレーやられてる気分ざんす!うが〜;
せ、せめてCDだけでも出してくれたら、
めっさギア入りそうなんですけど!
でも、出ないんですよね〜;とほほのほ…(T_T)