火遊び

いきなりの停電に二人の行為は中断となった。
ベッドで愛を交わし合っていた二人は手を止め、香藤は携帯電話の明かりを頼りに、
引き出しに置いてあった蝋燭をなんとか取り出し、火を灯した。
「懐中電灯はリビングに置いてあったよね。取ってこようか?」
「いや、これで十分だよ。すぐに終わるだろう」
時刻はすでに夜中であるし、さっきまで間接照明しか点いていなかったので、別に
明かりがとぼしくても不自由はない。
香藤はベッドにしどけなく横たわる全裸の岩城を見て、美しさにため息をついた。
「…蝋燭の明かりに照らされた岩城さんって綺麗だな〜…」
人口的な照明と違い、絶えず揺れる蝋燭の炎は、岩城の美しい肌の上をなめるよう
に照らすのである。
「何言ってるんだ?」
「岩城さ〜ん、ちょっと背中見せてv」
「はあ?」
香藤はベッドに上がり、岩城をうつぶせにさせる。蝋燭で背中を照らし、その肌を
手でたどると、シルクのような感触が指に伝わってくる。
「はあ〜綺麗だ〜」
うっとりするような香藤の口調。
「おい、香藤」
「じっとしてて、岩城さんの身体を探検するのv」
「まったく…好きにしろ…」
うきうきするような香藤の声に、岩城は諦めて枕に顔を埋めた。
香藤の手が背中をたどり、ゆっくりと下に降りていく。同時の蝋燭も香藤の手に
ついていっているのが熱で分かる。
「…おい、香藤…もう少し火を離してくれ…熱い…」
そんなに熱いわけではないのだが、下に降りていくにつれ、だんだんと妙な緊張
をもってしまう。
ぽたり、と蝋が岩城の腰のあたりに落ちて、岩城の身体は跳ねた。
「あっ!こら香藤!何してる?SMプレイでもする気か?」
「そういうのも懐かしくていいかもね〜」
「冗談じゃないぞ!もう、火を消せ!」
「駄目」
香藤は岩城の背中に唇を落とした。
先程の蝋はわざと落としたのではなく、岩城の背中に見とれていてうっかり落と
してしまったのだ。
その時あげた岩城の悲鳴の中に、甘いものが含まれているのを香藤は感じとって
いた。
すぐに固まった蝋の雫を舌で払いのける。
何の形も残っていない。岩城自身も、一瞬熱かっただけでひどく苦しかったわけ
ではない。
お互い、そういう商売をしていた時期があるから、よく知っているのだ。
岩城の甘い悲鳴を聞いた香藤は、いたずら心に火がついてしまった。
「…岩城さん…」
香藤は岩城の顔を振り向かせ、甘く深い口付けをおとす。
「…ん…」
岩城が受け止めている間に、香藤は岩城の身体を仰向けにして、膝を胸元まで
抱えあげた。
足を開かせ、先程まで自分を受け入れていた秘部に舌を這わせる。
「…あ…あん……」
甘い声をあげ、岩城は身を捩った。と、開かされた腿の裏側に、また蝋が落ち
てくる。
「あ…!か、香藤…」
「蝋が落ちちゃった?蝋燭を手にもってるから、いつこぼれるか分からないよ」
「な、なに…もう火を消せ!」
「駄目〜岩城さんの怖がってる声って可愛いんだもん〜v」
「な、何言ってる!」
また、蝋が落ちてきたが、今度は秘部の近くだったので、痛みとともに岩城は
背中から頭の先まで電流のような快感が走った。
「…あん…う……」
「岩城さん…感じてるんだね…」
香藤はまた舌で触れてくる。
また近くで香藤は蝋を落とし、今度はわざと秘部に滴が流れ込むようにした。
岩城は声をあげて身を捩った。しかし、苦しみだけでないのが、陶酔を帯び
た悲鳴で分かる。香藤は岩城の膝頭を軽く押さえてその様子を眺める。
「…あ…あ…」
揺れる光と炎の熱さを感じるので、火が消えていないと分かるが、どこに蝋燭
があるのか岩城には分からなかった。
頭の中が溶けそうになってくる。
身体中を包みこんでくる恍惚に身を委ねたい…
足を香藤の身体にからみつかせて、思い切り腰を揺らしたい衝動が突き上げる。
だが、足をのばして炎に焼かれるかもしれない、と不安がよぎって、体を動か
すのを躊躇ってしまう。
身体を自由に動かせない辛さから、岩城の内に快楽がたまってせつなくなって
くる。
しかし、香藤は火を消さずに、さらに岩城の快感を引きずり出そうと指を入れ
てきた。
「あう!」
岩城は背中をそらせたが、足は伸ばさなかった。
苦しさから少しでも楽になりたくて、岩城はシーツを強く握りしめる。
「…あ…あ…香藤…もう……」
「すごい岩城さん…こんなに濡れて…指がちぎれそう…」
指から快感をむさぼりとろうと、熱く濡れた襞が妖しく蠢き、締め付けてくる。
「…い、いや…もう…やめて…くれ…」
焦らされ、身体を思い通りに動かせないもどかしさに、身体がたまらなく疼く。
膝まで抱え上げた足を自ら開いて、腰を揺らす岩城のエロティックな姿に香
藤は眩暈がしそうだった。
瞳は情欲に濡れて香藤だけを求めている。
『もう、ちょっと遊ぼうかと思ったんだけどな〜…』
見ている香藤の方が我慢できなくなってきた。
きらきらと光る蜜を零し、岩城の潤んだ瞳で求めてこられて、我慢出来る男が
いるはずがないのだ。
持っていた蝋燭をサイドテーブルの灰皿の上に立て、香藤は身体を岩城の足の
間に入れる。
炎に焼かれる心配がなくなった岩城は、すぐに香藤の腰を足を巻きつけ、愛撫
を強請った。
早く楽になりたい。内に滾る熱い激流をあふれさせたい。
「…岩城さん…」
「香藤…早く…きてくれ……」
香藤は岩城の望みをすべてかなえた。


「うわ〜ん、岩城さ〜ん、ごめんなさ〜い」
「あんなに火を消せって言ったのに消さなかった罰だ!」
昨夜、あれから、お互い望むまま抱き合った。疲れ果て、シャワーを浴びた後
で、二人はいっしょに眠りに落ちた。
そして、次の日の朝、満足げに寝ていた香藤が変な感触に目を覚ました。
うつ伏せになった身体を起こそうとしたが、動かないのである。
見ると手足がベッドの足にスカーフでくくられていた。
なにやら、背中が熱いぞ。
「え?な、何?どうなってんの〜」
と叫んだ香藤の目に、身支度を整えた岩城の姿が飛び込んでくる。
何をしているのかと尋ねたら、その名の通り「お灸」をすえているところだと
いう。
岩城が今撮影しているドラマのスポンサーの一つでもある、某メーカーさんが、
持ってきてくれたものである。
役者全員に配ってくれた。
岩城は自分はお灸なんてしないのに、どうしようかな〜と思っていたのだが、
こんな、いい使い道があったとは…楽しい誤算である。
「ちょ、ちょっと…岩城さ〜ん、熱いよ〜」
「悪い子には、少々お灸をすえんとな…」
幸い、今日はお互い久しぶりのオフである。香藤にとっては不運だったが…
「ごめんなさ〜い、もう火遊びはしませ〜ん」
香藤の泣き声は朝のさわやかな寝室に響いた。



H21.7.6

他のジャンルで思いついたシュチュエーションなんですが、春抱きでやってみ
たら、どうなるかな〜と試してみました;
ギャグっぽく見えるけど、やってる事は結構過激な気がするんでアダルトに;