香藤君と腐女子さん方々

人気俳優、香藤洋二は夜の自室、PCでネットを閲覧していた。
今日はこの広い家に一人きりである。
岩城はドラマのロケで北海道に行っており、帰ってくるのは明後日の予定だった。
ちょうど香藤は映画の撮影が終わっての休息期間になっていた。
仕事が入るのは明後日なので、岩城とは完全にすれ違いとなる。
「はあ〜タイミング悪いな〜」
一人だと凝った料理を作る気にもなれないし、遊びに出る気も半減する。
寂しさと退屈を紛らわせようと、香藤はネット閲覧で暇をつぶしていたのである。
趣味のサーフィン関係のサイトをいろいろと観て回った後、自分のファンサイトを覗いて
みた方がいいだろうか?と思う。
いつもは事務所が公式に設けているサイト以外はあまり見ないようにしている。
ファンレターはきっちり目を通すが、ネットなどの相手不在の場所だとマナーを守れない
者もいる為、読んでいて不快に感じる事があるからだ。自分への批判だけならいいが、ス
タッフやマネージャーの悪口まで喚き散らされるがかなり嫌だった。
しかし
『岩城さんのファンサイトってどんなのだろ?』
ちょっと気になって「岩城京介」で検索してみる。
ずらりと並んだサイトを無造作に選んで、きちんとした言葉使いをしているかで、読むか
決めて閲覧してみる。
印象としては、岩城のファンは真面目な子が多いようだ。
そんな中、女性が開いているファンサイトかと思って読んでいたら男性だった、なんての
もあった。そこには
『香藤洋二が羨ましい…一度でいいから代わって欲しい…』
などと書いてあり、香藤は思わず
「ふざけんな!誰が代わるか!」
と、PCに向かって怒鳴ってしまう(はたからみたらかなりマヌケだぞ香藤…)
『あの二人、別れないのかな?今は熱くなってても冷めたりする時期がくるかも…』
「ありえね〜!100万光年たっても別れるなんてありえね〜!」
またPCに向かって叫んでしまう(光年は年月の単位じゃなくて、距離の単位だよ香藤…)
まったく。ふざけた奴もいるもんだ。
プンプン、と頬を膨らませた香藤が、そろそろ見るのを止めようとした時、あるものが目
にとまる。
『ディープな岩城ファンの集い(女性向け)』
『女性向けってなんだろう?さっきみたいな男性岩城ファンはお断りって事かな?でもディ
ープって?』
ディープという言葉が少々気になり、思わずポチッと押してしまう。
パスワードの入力画面が出てきた。
『あちゃ〜閲覧制限がかかってんのか。メール送ってゲットするのも邪魔臭いな〜試しに
なんか打ってみようかな?』
香藤は思い付くのをいくつか打って、駄目だったら閲覧するのを諦めようと思っていた。
『iwakideeploveなんてどうかなv』
冗談半分で打ち込んでみたら認証された。
『おお〜俺ってすごい〜もしかして天才!?』(管理人さんと君の思考回路が似ていたん
だと思うよ香藤…)
そして、開いた先には…
めくるめく岩城と香藤の愛の妄想大爆発なイラストやら小説やら漫画やらが並んでいたの
だった。
「な、な、な、なんだこれは〜!」
ファンの人が描いた似顔やイラストはしょちゅう送られてくるし、危ない本が送られてき
た、と聞いた事もある(金子マネージャーが見ないでいいですよ、と言ったので読んだ事
はないが)
それにしても…
『ちょっと過激だな〜●器も描いてあったりするし…女の子が描いてるんだよね〜成人し
てるだろうけど〜』
初めは驚いてショックを受けていた香藤だったが…
『あ、この岩城さん可愛い!こっちは…色っぽいな〜岩城さんの特徴をよく掴んでるよ!』
だんだん見入ってくる香藤であった。
『こういう体位もあるのか〜今度試してみようかな〜ん?こっちは、この角度じゃ入って
ないだろ!(←何が?)』
小説も漫画も読んでみる。
「え?岩城さんこんなに女々しくないだろ〜」
「俺、そんな事言わないって!」
「いや〜そんなラブラブだなんて〜ない事もないけどね〜」
「もう少し慣らして濡らしてからの方がいいな〜(←何が?)」
「岩城さん、もう少し足開くよ(←香藤…)」
ああ…そんな岩城さん、こんな岩城さん、あんな岩城さんがこれでもかと言わんばかり
に…
岩城さんラブという意味では、香藤も腐女子さん方々もあまり大差はないので、萌は似て
いるのだった。
自分達の愛の物語と可愛い岩城に、頬がゆるむ香藤であった。
その中で香藤はとても気に入った作品を見つけた。
「これ、せつなくていいな〜絵も上品で綺麗だし。誰が描いてるんだろ?」
描いている人のペンネームは岩藤京子さん。サークル名はフラワンハグハグ。
『サークルってなんだろ?大学の集まりかな?ん、同人誌?通販可能?』
通販受け付けページを閲覧してみる。
どうやら、岩藤京子さんが描いた自分達の漫画の本が買えるようだ。
「……………」
5秒程迷った後、香藤は通販を申し込んでいた。
『別に趣味とかじゃないよ!あくまで好奇心を満たす為に購入するんだからね!』
心の中でそう言い訳しながら、申し込み記入データの送信ボタンを押す香藤であった。
『ふう。この後、確認メールが届くのか?ん?『今度の冬コミ受かりました』?冬コミ
ってなんだろう?』
香藤のコミケデビューも間近か!?




H21.9.20

初めの頃の香藤って軽くておバカさんでしたよね〜それも可愛かったv
今の大人な香藤もかっこよいけどねv
ペンネームとサークル名は私の創作です。同じ方はいないと思うのですが…;
いるのでしたら教えて下さい。変えさせて頂きます;