アニメ男塾について


私が「魁!男塾」を知ったのはTVアニメからである。確か「北斗の拳」の後番組としてオンエアされたと記憶している。それまで何の予備知識もなかったが、主人公の剣桃太郎の声を好きな声優さんが演じるので観る事にした。
第一回放送から楽しみして観た。今でも覚えているがアニメのオープニングは最高だった。
桜が舞い散る中に出て来るタイトルバックに桃のアップ。いぶし銀な色使いに篝火、紅葉、荒波、和風紋様、水墨画のような景色が流れ、最期に風車が色鮮やかに回る。日本の美しさを凝縮したような内容であった。戦闘シーンがまったく入っていないのも個人的には好感触。登場人物の動きもとても良く、桃、富樫、虎丸、Jが揃うところや桃の太刀さばきは様式美さえ感じる。桃の持っている太刀の朱柄が紺色のガクランに映えて美しい。
CMを挟むアイキャッチーとエンディングも凝っていて良かった。
これだけで物語が作れそうな出来である。
「魁!男塾」は原作もそうだが初期はトナーメント方式の格闘漫画ではなかった。
だからアニメも始まった当初はギャグを挟みつつの学園マンガだった。
男塾という訳の分からない閉鎖空間で、男達の友情あり笑いありの義理人情の世界で物語が進んでいく。
私はこの初期の学園漫画の雰囲気がとても好きだ。
アニメは特に原作のそういったおもしろい箇所を、アニメ独自の視点で描いていて、とてもクオリティが高いと思う。原作には「差別」や「軍国」ともとれる問題点があるが、アニメでは緩和されていた。
しかし、私にはちょっと不満があった。
それは主人公である桃の活躍が少ない事である;
起承転結でいうところの「起」と「結」は登場しているのだが、「承」「転」の出番が少なかったのだ。主人公なのに…;カッコ良いから余計にはがゆい;(ああ〜掘さんもっと喋って!と、どれだけ思ったかしれやしねえ…)
「承」「転」の部分を受け持っているのは富樫であった。とにかくアニメは富樫が第二の主人公と言えるぐらい活躍する。
『アニメ「魁!男塾」は「桃と富樫の友情と愉快な仲間達のお話」なのだ』
と言ってしまってもいいだろう。
なんといっても主人公の桃は富樫を特別視している。アニメ「魁!男塾」における桃の「親友」「相棒」は富樫なのだ。「修二と彰」みたいなもんで二人は実力も対等なんだべ(一話で原作にはない二人の決闘もあったし)
私はこの「桃と富樫の友情と愉快な仲間達のお話」が大好きだった。だから、だんだんと「トーナメント式格闘漫画」に移行していった時はもの悲しかった;
当事のジャンプ系漫画はドラゴンボールを初め、北斗の拳、セイントセイヤ等とにかく「トーナメント式格闘漫画」が散乱していた。
「トーナメント式格闘漫画」とは、主人公と仲間達の前に強敵が現れそれを倒す。するとまた別のさらに強い敵が現れそれもまた倒す。という事を延々と続ける漫画形式の事である。
この方式はやり出すと終わりがないし、キリがない。力のインフレが起こり、前回までの敵味方の話や心情的確執はなかった事になったりする。性格や能力値も変化するし;これは女性読者にとっては辛いところ;
単に格闘だけ見たい男性読者には不満はないだろうが、女性読者は結構キャラに思い入れたりする人が多い。思い入れのあるキャラの性格が変わったり、使い捨てられるのは見ていて悲しい;原作の「魁!男塾」も例にもれずこの形式にはまってしまい、物語がところどころ破綻していく;
が、アニメの「男塾」は出来るだけこの破綻を押さえようとしていたと思う。
初期の学園漫画の時も、富樫や桃の台詞を原作とは変化させて、性格を統一するようにしていたし(「桃がこの台詞を言うのはおかしい」と解釈したら違う人に言わせている)「格闘漫画」にありがちな「戦う理由や目的が希薄」というのも出来るだけ無くそうと変更していた。このまっとうさが私は好きだったのだが、「格闘漫画」にとっては物足りないのだろう。「戦う理由や目的」があるとそれを達成した時、物語が終わってしまうからね;
そのせいかは知らないが、アニメ「魁!男塾」は打ち切りという形で終わってしまう。
八連制覇が終わったところで、である。
当時は、残念ではあったが「トーナメント式格闘漫画」になったアニメ「魁!男塾」を私はあまり見たくなかったので、差程ショックではなかった。掘さんの声が聞けなくなるのは悲しかったが…
原作も友人から借りて読んでいたのだが、確かアニメ打ち切りを機に借りるのを止めたと思う(ガンダーラ戦が終わったあたりかな?)
現在、再びDVDでアニメ「魁!男塾」を見直すと「本当にクオリティ高かったよな〜」と思う。
そしてアニメスタッフが「学園漫画コメディ風として「魁!男塾」を描いていた」という事も実感する。八連制覇の後は完全なトーナメント式格闘となる「天挑五輪」に突入するので、アニメ「魁!男塾」としてはここが限界だったのかもしれない。
でも、原作とは違うオリジナルストーリーとしてならば描けたかもしれない。きっと秀麻呂とか椿山も出てくる話になるだろう(劇場版みたいに)観てみたかった気もする。
しかし、そうなった場合、私の好きな伊達の活躍は極端に減るのだろう、と予想するので複雑な気分だ;(私はアニメスタッフは伊達とか三面拳に対する愛は薄い。とみている;)
それにしても腐女子になってから再びDVDでアニメ「魁!男塾」を見直してその色気にノックアウトされるとは…;原作を買い集めるはめになろうとは…;伊達×桃(リバOKプラトニックOK)に転ぶとは…;予想出来んかった;(ここはBGMに「汚れちまった悲しみに…」を流すところだな;)
人生って分からないものである;