父親と恋人の両立は可能か?


夜のとばりが降りている。
島にある滑走路を一台のセスナ機が飛び立った。
乗せて来た乗客はこの島に降ろしたので、乗っているのはパイロットだけである。
島に上陸した客を、桃は一人滑走路に立って出迎えた。
彼は何も持たず、身ひとつでここに来たらしい。ラフな洋装姿の彼を見るのは久
し振りな気がするが、相変わらず様になっている。
「明日の朝の予定じゃなかったのか?」
「天候の都合で今日のうちに来た方がいいとパイロットに言われた」
夜のフライトをものともしないとは、さすがベテランパイロットだ。
「そうか…」
「お招き預かりまして…」
「ああ、いらっしゃい、伊達…」
二人は誰もいない夜の滑走路で、恋人のする口付けを交わした。

「う〜ん」
サイドスタンドのついただけの部屋で、獅子丸は目を覚ました。
あれ?ここどこだっけ?
いつもの自分の部屋ではない。
ベッドの中でぼんやりした頭で考える。そして、父親の別荘に連れてこられた事
を思い出した。
父の運転するセスナ機でこの小さな島に連れて来られ、二人だけで思いきり楽し
んだのだった。
釣りをしたり、海で泳いだり、いっしょにバーベキューの用意をしてそれをいっ
しょに食べたり。
自分達の他には誰もおらず、父親と遊んでいるのを邪魔する人はいなかったので、
獅子丸は嬉しかった。
父には本当にたまにしか会えず、会えたとしても父の周りにはいつも人がいて、
二人で遊べる事は滅多にないのだ。遊んでいてもすぐに人が呼びに来たり…
一度、人に呼ばれて帰ろうとした父を、泣きわめいて引き止めようとした時があ
ったが、父が淋しそうな困った顔をしたので、泣くのをやめた。
大好きな父を困らせてはいけなかったからだ。
「ごめんな、獅子丸」
謝って父は行ってしまった。
それから、数カ月後にこの島に連れて来られたという訳である。
昼間にはしゃぎ過ぎたせいで、獅子丸は夕食中に船を漕ぎだし、寝てしまった。
かなり早い時間に寝たので、真夜中という中途半端な時間に目を覚ましたのだっ
た。
喉が乾いたな〜…
サイドテーブルに水差しが置いてあったのだが、寝ぼけている獅子丸は気付かず、
部屋を出て台所に向かった。
台所はどこだったかな〜?
欠伸をしながら歩いていた獅子丸は、突き当たりの部屋のドアが少し開いている
のに気付いた。微かな光がもれている。
父の部屋は自分の隣だった筈。
あそこはお客様の部屋だと思っていたけど?誰かいるのかな?
獅子丸はそ〜っと部屋に近付き、開いているドアの隙間から部屋を覗いた。
部屋の中はうす暗かったが、間接照明が灯っていたので物の判別ぐらいは出来た。
ベッドの上に知らない男がいた。そして、その男の下に父が横たわっている。
知らない男が父を組み敷くような形で、二人はベッドの上に寝ているのだ。父の
瞳が濡れているのに獅子丸は気付いた。
パパが泣いている!?
「パパをいじめちゃだめ〜!」
獅子丸は知らない男の背中に飛びつき、闇雲にガブリと噛み付いてやった。
「なんだ!?」
「獅子丸?」
伊達は自分に飛びかかってきた、ゴム毬のような子供の首根っこを押さえて持ち
上げる。
「…お前が獅子丸か…」
「はなせ〜!」
獅子丸は手足を振り回して男の腕から逃れようとしたが、びくともしない。
「パパをいじめるな〜!このわるもの〜!」
「なんだと?おい、桃…」
伊達が振り返ると、桃はベッドに伏して肩を震わせていた。
「…笑っている場合か…これ、なんとかしろよ…」
「ふっふふ…獅子丸、おいで」
獅子丸は手を差し出した父の胸にガバリとしがみつく。伊達をキッと睨み付けた
まま。
なんて怖い顔の男だ、顔にも身体にもたくさん傷がある。知ってるぞ、こういう
のを「あくにんづら」って言うんだ。でも、なんで服着てないんだろ?あれ?パ
パも着てないぞ?
「パパ!こいつにいじめられてたんでしょ!だいじょうぶ!?」
「獅子丸、別にパパは苛められていたんじゃ…まあ、ある意味では苛められてい
たと言えるかも…」
「おい…」
誤解を招くような事を言うんじゃねー
と伊達は目で語った。
「ふふ…さ、獅子丸、部屋に戻ろうか?」
桃は床に落ちていたローブを拾いあげて着ると、獅子丸を抱き締めたまま立ち上
がった。
「寝かせてくるよ」
「…所帯じみたこった…」
獅子丸は桃に抱かれたままでも伊達を睨み付けており、出て行く時には「あかん
べ〜」を伊達にしていく。
「…可愛くね〜…」
一人残された伊達は、ベッドヘッドに背をもたせて座った。
微かな痛みに気付き、見てみると腰にちかい右尻のあたりに、くっきり歯形がつ
いていた。
「…あのガキ…」
毛布ごしとはいえ、おそらく容赦のない力で噛んだのだろう、血がでなかっただ
けでも幸いだったかもしれない。
明日の朝、会った時はどうしてくれよう…
とりあえず今夜は、父親である桃に借りを返してもらおう、と伊達は決めた。
獅子丸の部屋に戻ると、桃は獅子丸をベッドに座らせた。水差しからコップに水
を注いで、彼に飲ませてやる。少し落ち着いた様子をみてから、ベッドに寝かせ、
自分も獅子丸の横に寝転んだ。
「パパさっきいじめられてたんじゃないの?」
「違うよ」
「でも泣いてなかった?」
「う〜ん…あれは愛しくて涙がこぼれてきたんだ」
「いとしいって何?」
「とても大好きって事だよ」
「パパさっきの『あくにんづら』の人好きなの?」
「…ふふ…ああ…大好きだよ…」
「…僕より…好きなの…?」
「そんなの獅子丸の方が好きに決まってるだろ」
「ほんと?」
「ああ。『あくにんづら』の人より獅子丸が大好きだよ」
「よかった〜」
その時、客室にいた伊達は豪快なくしゃみをした。
桃のやつ…何か俺の悪口いってやがるな…
「でも、どうしてあの人が好きなの?」
「親友…とても大切な友達だからだよ」
「え〜あの人パパの友達なの!」
「そうだよ」
「どうしよ〜僕、わるもの、とか言っちゃった…」
「明日、謝ったらいいよ」
「だいじょうぶかな〜」
「大丈夫だよ。優しい人だから、すぐ許してくれるよ」
「あの人優しいの?」
「ああ…」
「『あくにんづら』なのに?」
「そっ『あくにんづら』なのに」
「ふ〜ん…」
「ふふっ…さ、もう寝ようか」
桃はサイドスタンドの光を弱くした。
「パパ…行っちゃうの…?」
「獅子丸が眠るまでここにいるよ」
「ほんと?」
「…ああ…」
「…おやすみなさい…」
「…おやすみ…」
目を閉じた獅子丸の顔を優しい瞳で桃は見つめていた。寝息をたて始めたのを
確認すると、桃は獅子丸の額にキスをして部屋を出て行った。
客室に戻ると、伊達がベッドヘッドに背をもたせて雑誌を読んでいた。
「やっと、お戻りか…」
雑誌をサイドテーブルに置いて、酒の入ったグラスを手に取る。
「寝ててくれても良かったのに」
「冗談言うな。お預けくったまま眠れるか」
「…ふふ…悪かったな」
「笑いごとじゃねーぞ…王子様は眠ったのか?」
「ああ…お前に獅子丸を会わせたいと思って呼んだんだが、とんだ対面式にな
ったな」
桃はベッドの上に乗ると、のばしていた伊達の足を跨ぎ、向かい合う形で伊達
の膝の上に腰を降ろした。
「まったくだ…ケツ、噛まれたぞ」
「あははは…そりゃいい…」
「…あのな…だから、笑いごとじゃねーつってんだろ」
「天下の伊達組長に噛み付くとは、さすが俺の息子だな、と思って」
「…親ばかが…」
「いい子だぞ…」
「みたいだな…」
「こんな父親でも好きでいてくれる…俺を困らせまいと我慢もしてる…あんな
に小さいのにな…」
桃が子供を愛する父親の顔をしていた。
「聞き分けがいい方だから、余計可哀想だ…」
「お前とは大違いだな」
「お前は一言余計なんだよ」
伊達の頭を桃がペシリとはじく。
「では、続きをさせてもらおうか…」
と、伊達がグラスをサイドテーブルに戻し、桃のローブの紐に手をかけたが
「ドアの鍵はかけとくか?」
「駄目だ。何かあった時、獅子丸が入れなかったらどうする?」
「また、飛び込まれるのかよ…」
「獅子丸がそうしたかったらな」
「王子様が最優先か?」
「当たり前だろ」
「はいはい、諺でも泣く子と役人には勝てないって言うからな。諦めてやるよ」
泣く子は獅子丸で役人は桃なのだから、この親子に適う筈がないのである。
「ふふ…もしかして、伊達…妬いてるのか?」
「…どうかな…?」
「適わない勝負は初めからするなよ」
「同じ土俵にも上がれない訳か?」
「ああ、そうだ。妬くだけ無駄だ」
迷いなく、きっぱりと言いきる桃を見て
「それでこそ、お前だな…」
と、伊達は笑みを浮かべた。桃の腰を引き寄せ、深く口付ける。
自分の子供より恋人が大切、などと言う奴に惚れてたまるか。そんな奴はこち
らからお断りである。
けれど、恋人の座は誰にも譲る気はないし、恋人としての特権は微塵も遠慮す
る気はない。
「俺しかやらせてもらえない事は、しっかりさせてもらうぞ…」
伊達は桃の手を取り、中指を自分の口に含ませ嘗め始めた。
口から離すと、桃の手を握り、濡れた彼の指を彼の秘部に押しあてた。自分の
指で慣らせ、と言っているのだ。桃はその通りにした。
「…ん…」
ゆるゆると自分の指で内を擦り、ほどけさせる。
昂りを感じてきた桃の表情が、次第に妖艶な恋人のそれになっていく。
伊達はグラスの酒で自分の指を濡らすと、桃の秘部に近付けた。
桃が自分の指を抜こうとするが、伊達は彼の手首を掴んで止める。
「抜くな」
「…え…?」
桃の指が入った同じところに、伊達は自分の指も挿入した。
「…う…!」
強烈な刺激に桃の身体が飛び上がる。
「…ちょ…伊達…」
自分の指を抜こうにも、伊達の指が邪魔して出来ない。ぬるりと伊達が指をす
り抜けると、自分も動かさずにはいられなくなる。違う意志の持ったものに深
く抉られる感覚に、桃は身体を震わせた。
官能的な刺激に内側から力が抜けてくる。膝の力が無くなって身体が落ちると、
さらに深く指を受け入れる事になる。桃は伊達の肩に顔を乗せると、自由な片
手で背中に縋り付いて身体を支えた。
「…伊達…も…よせ…」
ほどけた内部が次第に濡れていくのが分かる。快楽を欲してからみついてくる
のも。
熱くとろけてくる内を自分の指で感じるのは、妙な恍惚に繋がる。じっとして
いられなくて、無意識に腰を揺らしてしまう。
「お前を苛めてるからな…」
「…ばか…やろ…」
汗が滲んできた桃の額に唇で触れると、伊達はやっと指を引き抜いた。
「…は…あ…」
脱力した桃の身体をうつ伏せに横たえさせて、伊達は桃の腰を持ち上げた。
腰だけ高く持ち上がる格好が恥ずかしくて、桃は上半身も起こそうとしたが、
肘がガクガクと震えて起こせなかった。
桃が自分で思っている以上に身体が感じているを自覚したのは、伊達が内に入っ
てきた時だった。
「…あ……!」
頭の中が真っ白になって意識が飛びかける。蜜が溢れ、その後の突き上げてくる
律動にも激しく反応した。
「……く…う…!」
シーツの波の上を、桃が身体を泳ぐようにくねらせている。
手はシーツを掴んだまま離さず、背中が反り返るごとに、そこがきつく締め付け
てくる。
その姿はとても淫らで、伊達はもっと感じさせてやりたくなった。
「…あ…あ…」
伊達が揺れる桃の頤を掴んで、無理に後ろに向けさせ、口付けた。桃の瞳から涙
がこぼれているのに気付く。
「また、獅子丸に怒られそうだな…」
「…また…噛み…つかれ…るぞ…」
「今は俺がお前に噛み付いてるがな…」
桃の首筋に伊達が噛み付く。
甘い痛みに桃が声をあげる。
恋人の濃密な時間は明け方近くまで続いた。
桃が父親の顔に戻ったのは、朝の挨拶に獅子丸が部屋にやって来て、ベッドで眠る
桃に抱きついてきてからだった。

問:父親と恋人の両立は可能か?
答:桃なら楽勝

                              


H20.11.15

初獅子丸書きでした。5才前後という感じでお願いしますだ〜;それぐらいの
年齢だったら覚えてないだろう;悪魔な父親と天使の息子という図式はたま
らんものがあります(変な意味ではない)
別荘とは例の500km離れている別荘です。桃の私有地だよね?使用人も誰も
いないかは知りませんが、一応誰もいないという設定にしました〜;
私の話は、組長×総理だと総理が主導権握ってる事が多いので、たまには組
長にも主導権握らせてあげようかな〜と;この時はまだ総理じゃないと思う
けど。
自分が否定されるのを許す、ってかなり相手を認めてないと駄目だと思うん
ですよね〜敵味方関係なく。
そういう関係に痺れるんざます(むしろ敵同士の方が萌え!)