初めての…

第四話 夜


次の日、伊達は桃が恥ずかしがって自分を避けるかもしれない、と思っていたが、
教室で桃と目が合った時、彼は照れた様子ながらも、優しい微笑みを伊達に向けた。
もしかして、桃は自分の想いを受け止めてくれたのだろうか?
そんな期待を胸に抱きつつ、伊達はもう一度、二人きりの時に桃に深く口付けた。
桃は驚きながらも抵抗せずに受け止めた。
唇が離れた後、桃は頬を赤く染めて伊達の胸に顔を埋めてくる。
桃は真剣な行為に対して、いい加減な態度をしない男だと分かっているので、自分
の想いを受け取ってくれたと分かった。
幸せな気持ちに満たされるが、伊達はどうしても確かな証拠が欲しかった。
だから、ある日、伊達は桃の腕を掴んでこう言った。
「桃、今夜、お前の部屋に行くぞ。だから寝るなよ」
「え?なんで?」
「お前を抱く」
「な!」
桃の顔が一気に赤くなる。
「だ、伊達、お前…何言ってんだ!」
「お前に惚れてるからだ。だから抱く」
「…………」
伊達の真剣な表情に、桃は言葉が出てこなかった。
「嫌なら部屋から出ておけ。お前がいなかったら諦める」
そう言うと伊達は踵を返して去っていった。桃はしばらく呆然としていたが、次第
に怒りが湧いてきた。
なんだよ〜自分の言いたい事だけ言ってさっさと消えやがって〜!
こっちの都合とか気持ちとか聞かずに、なんでもかんでも一人で決めちゃって…
でも…伊達は真剣で…真直ぐに自分の気持ちを伝えてきた…
どうしよう…
何がどうなるんだろう?自分達の関係は何か変わるのだろうか?
今夜?伊達と?
どういう事が行われるのか、想像してみた桃の顔はさらに赤くなった。

夜も更けて、ほとんどの塾生が眠りについただろう、時刻。予告通り、伊達は桃の
部屋を訪れた。
ドアを開ける時は、さすがに伊達も少し緊張する。
ドアノブに手をかけ、深呼吸してから開けて部屋の中を見渡した。
部屋の中に明かりはなかったが、カーテンのない窓から差し込む月明かりで物の輪
郭ははっきりと分かる。ベッドの上に桃がいた。
ちょこん、と正座している姿を見て、気が弛んだ伊達は口元を綻ばせる。
「お前、なんで正座なんかしてるんだ?」
伊達は部屋の中に入り、桃に近付いた。
「え?なんとなく…落ち着かなくて…」
指摘されるまで、正座しているのに気付かなかった。
お前の部屋に行く、と伊達に言われてから桃は気持ちが落ち着かず、夕食もろくに
喉を通らなかったのである。
「部屋にいたって事はいいんだな…」
「あ…」
伊達はベッドに腰かけながら、桃の頬に触れて顔を近付けてくる。途端に桃の心臓
が早鐘を打ち、焦りはじめた。
「あ、あのさ…伊達…今日じゃないと駄目か?」
「他の日にしても変わりないだろう」
「で、でも…なんていうか…ちょ、ちょっと早過ぎないか…?」
停電の中で口付けをかわしたのは三日前である。つまり、桃が伊達を好きだと認識
してから三日しかたっていないのだ。
「普通はこう…付き合いだしてから、お互いの事をもっとよく知ってから…とか…
さ…」
「俺はお前を知っている。だから惚れた」
「え…」
「惚れてるから抱きたいんだ」
本当にストレートな言葉である。桃は彼らしい、と感じて笑ってしまう。同時に幸
せな気持ちにもなる。
「お前は俺の事を知らないのか?じゃあ、何が知りたい」
「知りたい事?」
「そうだ、なんでも聞けよ。答えてやるぜ」
「う〜ん、知りたい事か〜いつも自身満々で唯我独尊で自分勝手な性格してるって
いうのは知ってるしな〜」
「…………」
桃は腕を組んで考え込んだ。
「自分で勝手になんでも決めて、なんでも話さず行動するから周りに迷惑かけてるっ
てのも知ってるしな〜」
「おい…」
「口も悪いし目つきも悪いから、街でやくざ者に因縁付けられたりする事も多いし〜
話し合いより拳で黙らせちゃうから困ったもんだし〜」
はあ〜と桃はわざとらしくため息をつく。
「あのな…」
「とても優しいのも知ってる。口数は少ないけど、ちゃんと人の気持ちを考えてる事
も、心は真直ぐで純粋なのも」
照れたのか伊達は少し目を逸らした。
「子供ぽいところもあってピーマンが苦手とか」
「なんで知ってる?」
「飛燕がぼやいてたぞ。好き嫌いは駄目なのにって」
「…ったく」
「ピーマン、おいしいじゃないか。なんで嫌いなんだ?」
「青臭い苦味が嫌なんだ…知りたい事はこれかよ?」
「…一つ嫌なところがある…」
「ん?」
「…自分の命を大切にしないところ…」
「…………」
「…その事にとても腹がたったりする…」
「…俺もお前の嫌なところが一つある」
「なんだ?」
「皆を好きなところだ」
「え?」
「お前は誰もかれも好きになる。許してしまう。そこに時々腹がたつ」
「仲間を好きなのは当然だろ。なんで嫌なんだ?」
「…時々、お前を見る奴の目を潰したい、と思うぞ」
「物騒な冗談言うな」
「…お前を見るのは俺だけでいい、と思う…」
「…え…?」
「…お前が俺だけ見てればいいのに、と思う…」
「…伊達…」
桃は目を閉じて、額を伊達のそれに押し当てた。
「…触られてドキドキするのはお前だけだ…」
「…………」
「…キスされて嬉しいって思うのも…」
「…桃…じゃあ、今もドキドキしてるのか?」
「…してる…」
「どれ」
「…あ…」
伊達の手が単衣の襟元からすべり込み、桃の胸に直に触れた。
「…本当だ…高鳴ってる…」
隠していた秘め事を見られた気がして、桃は恥ずかしくなる。身を引いたが、伊達は
桃の肩を掴んで逆に引き寄せた。桃の両頬を包み込み、真直ぐに瞳を見つめる。
強い光をもつ彼の瞳に見つめられると、桃は言葉を失い、抗う術を失ってしまう。そ
の光の中に、自分への想いが込められているのが分かるからだ。
伊達が顔を近付けてくると桃は瞳を閉じ、熱い口付けを受け止めた。
口付けながら、伊達は桃の身体をそっとベッドに押し倒す。膝を割り、身体を入れる
が桃は抵抗しなかった。
唇を離した伊達が桃の項に軽く噛み付くと、桃が吐息を洩らす。帯をほどき、はだけ
た単衣の隙間から手を入れて桃の肌を愛撫した。
「…う…ん…」
桃が伊達の背中に手を回し、身を捩りだす。脚の間に伊達がするりと手を入れると、
桃の身体がびくりと跳ねた。
「…あ…伊達…」
愛撫を受けると素直に反応して蜜を流し始める。
指を密で濡らしながらも、伊達の唇は桃の身体を辿り、時折歯をたてるのだ。官能が
広がり熱くなっていく身体に、桃は伊達の触れた箇所から朱色に染まっていくような
感覚を覚える。二人は生まれたままの姿で身体をからませていた。
濡れた指が秘部に入ってきた時、桃はたまらず悲鳴をあげた。
「…う!…や…だ…!」
けれど伊達は手を止めなかった。指で桃の内をまさぐり、唇と手で桃の身体を愛撫す
る。胸の先端を指が掠めた時、桃は身体を大きく捻ったので、今度は爪先をからめ、
もう一つの先端を口に含んで吸った。
「あ…!あん…」
自分の口から信じられない程の甘い声が洩れたので、驚いた桃は両手で口を塞いだ。
…な、なんて声を…
恥ずかしさと伊達から与えられる刺激に身体が熱くなる。初めて深い口付けをかわし
た時と同じ、妖しい淫らな感覚が滲みだして侵食していく。手で押さえた口から悶え
る声が堪えきれずにこぼれだす。自分の身体が暴走していくようで、桃は怖くなった。
「…だ、伊達…やめてくれ…!」
泣いているような悲鳴に、今度は伊達も顔を上げた。
「どうした?」
「…やめてくれ…やっぱり…駄目だ…」
「なんで?」
「…………」
「…俺に触れられるのは嫌か?」
桃は首を横に振った。
「…じゃあ…何故だ?」
「……恥ずかしい…から…」
「…俺は見たい…感じているお前が…」
「…伊達…」
「考えるな…お前は俺だけ感じてればいいんだ…」
「…で、でも…あ…」
伊達の愛撫に桃は再び官能の世界に引きずり込まれる。
彼の言葉のせいか少し気が楽になった桃は、自分の身体の変化を初めて感じとった。
触れられている内が伊達の指を締め付けていた。拒んでいるのではなく、愛撫を求め
て蠢いていたのだ。
もっと強いものを欲している事に気付いてしまう。己の淫らさに戦くと、その心の乱
れが煽る要素となってより深い快楽を求めだす。
乱れは広がり、止められなくなる。伊達を欲して身体が揺れて、濡れていく。
自分がこんな風になるなんて…桃は信じられない思いがした。
「…くっ…う…ん…」
桃が苦しそうに身体を捩り始める。変化を感じ取っていた伊達は、指を抜き、膝を抱
え上げて脚を開かせた。
「…あ…」
すべてを伊達にさらけだしている格好に、恥ずかしくなった桃は目をつぶって横を向
いた。
うす暗い部屋の中で、伊達がじっと見つめているのが分かった。求めて濡れているそ
こにも視線を感じて身体が疼く。
「…見るな…よ…」
「俺が…初めてか…?」
「あ、あたりまえだ!」
伊達の言葉に桃は本気で怒った。
「お前以外の誰に…こんな事させるかよ…!」
すごい口説き文句を言っているのに自覚がないらしい。伊達は独占欲が滾るのを感じ
た。
「俺が最初で最後の男って訳だな」
桃はキッとした視線を伊達にぶつけるが、上気した頬と潤んだ瞳に睨まれても伊達は
怖くもなんともなかった。むしろ愛しさが増すだけである。
「違うのか?」
伊達が身体を入れて顔を覗きこんでくる。桃は彼の顔を両手で掴んで引き寄せると、
噛み付くように口付けた。
「…違わない…伊達しか欲しくない…」
濡れた瞳で伊達を熱く見つめてくる桃は、欲火を煽るのに充分に艶めいている。
「…俺もだ…お前しか欲しくない…」
伊達は桃の上に覆いかぶさり、激しく口付けた。
「…ん…ふ…」
舌をからませながら、腰を掴んで桃の中に入っていく。
「…!…」
桃の悲鳴は伊達の喉に吸い込まれていった。
「…あ…う…」
唇を離すと、桃は衝撃に大きく身体を反らせる。突き上げてくるそれから逃れよう
と、無意識にずり上がろうとするが、伊達が肩を掴んで許さない。桃は高まってく
る官能を感じて伊達の背中に縋りついた。
「…ん…は…あ…」
桃の声が次第に陶酔を帯びてくる。感じているのが伊達にも伝わり、その濡れた熱
さに翻弄されかけた。
深く入りこむのに力の必要がない程、奥へ誘うように吸い込んでくるのだ。
伊達は何度も息を落ちつかせねばならなかった。
桃の身体がこんなに男泣かせだとは思わなかった。
激しく突き上げたくなる衝動を、伊達は必死に堪える。
初めてである桃に無理をさせたくなかった。優しくしてやりたかったのだ。
「…あ…あ…うん…」
身体を揺さぶられながら、桃は伊達の言葉通り彼を感じていた。
内にいる存在を意識すると、頭からつま先まで強烈な快感が走り抜け、何度も気が
遠くなる。
「…あ…伊達…」
伊達しか感じられず、身体が熱くなっていく。
彼と一つになって高く上っていくのが分かる。
上りつめた時、桃は弾け飛んで意識を白く染めた。

布のような柔らかい感触に、桃は意識を取り戻した。
「…ん…」
目を閉じたまま身じろぐ。
「…桃…?」
伊達の優しい囁きが聞こえ、心が暖かくなる。
もう一度呼んで欲しくて、わざと返事はしてやらない。
「桃…」
また声が聞こえて嬉しくなった桃は、目を閉じたまま口元に笑みを浮かべた。
「こら…聞こえてんだろーが」
頬を指でつつかれる。桃は伊達の声のした方に身体を寄せると、彼の胸に顔を埋め
る事になった。伊達が手を桃の背中に回してくる。せつなくなって幸せだと思った。
「桃…寒くないか?」
「…ん…熱い…燃えるかと思った…」
あのまま、伊達と一つになって燃えてしまうのかと思う程、身体が熱くなった。今
もまだ、内側に熱が燻っているのを感じる。
伊達にくっついた桃は、彼から水の気配がしている事に気付いた。天動宮は各部屋
にシャワー室が完備してあるので、シャワーを浴びたらしい。
そして、自分の身体がさらりとしているのにも気付く。
伊達が濡れたタオルか何かで拭ってくれたのだ。先程の感触はそれだったのだと分
かって恥ずかしくなるが、同時に伊達の優しさに胸が締め付けられた。
自分が彼にとても愛されて、大切にされている事を強く感じる。
伊達が愛しくてたまらなくなり、桃はまた欲しくなった。
「…伊達…」
「…ん?」
桃は伊達に覆いかぶさり深く口付けた。唇から離れる時、舌で歯列をなぞる。ゆっく
りと伊達の身体に口付けを落とす。
項に、鎖骨に、胸に、と唇と指で肌を辿っていく。胸の先端に触れると指をからめ、
もう一方を口に含んで吸った。自分がされた時のように。
「…ん…おい…桃…」
伊達が吐息を洩らすのが聞こえる。
「…俺も…伊達が感じているとこが見たい…」
桃はそのまま伊達の下肢へ降り、脚の間に触れた。
伊達の身体が揺れるが、桃は唇と手を離さなかった。雫を滴らせてくると、それを
舌ですくう。
「…う…桃…よせ…」
昂ってくる身体を感じて、桃は伊達が熱くなってきているのが分かった。
「…伊達…可愛い…」
桃の言葉に伊達の身体の熱が上がった。
初めての桃の身体に負担をかけさせたくないから、今夜はもう触れないでおこう、
と思ったのに。
冷たいシャワーを浴びて熱を鎮めたというのに。
お前がその熱を煽ってどうする。
と伊達は思った。
「…よせって…桃…」
上半身を起こした伊達は、両手で桃の頭を捕らえ、顔を上げさせた。
桃と向かい合うと、彼の唇が自分の密で濡れているのが目に入る。
月明かりを浴びて妖しい光を放っているそれを見た時、伊達の全身の血が熱く滾
り、押さえられなくなってしまった。
手を引いて桃の身体をうつ伏せに倒すと、腰を掴んでそこにいきなり自分の昂り
をねじ込んだ。
「うっ!」
衝撃と痛みに桃は身体を強張らせる。
早急な刺激についていけず、ふるふると全身を震わせた。
しかし、伊達が後ろから手をまわして愛撫してくると、先程まで感じていた身体
は緩みはじめる。
「…あ…ふ…」
背中にピタリと身体を密着させて、伊達は桃に触れてくる。
のけぞる喉元に手を這わせ、胸にも脚の間にも手を入れて優しく愛撫してくるの
だ。
指に甘くほどけさせられ、蜜が溢れ出すのが桃自身にも分かった。
伊達を受け入れているそこはすぐにとろけて、彼を深く飲み込みだす。
もう知っている桃の感じるところを、伊達が弱く突いてくるので、その度に桃の
身体は跳ね上がった。
頭の芯がくらむ程の陶酔を感じる。
「…あ…!…は…」
「そこが…いいのか…?」
「…う…うん…して…」
「…こうか…」
「う…!あん…いい……」
甘い声がこぼれるが、桃に気にしている余裕などなかった。
官能を知った身体は素直だった。
腰が時折、悦楽の為にゆらりと揺れる。
想う人と身も心も繋げる事が、こんなに感じるものだと知らなかった。
こんなに歓びに満たされる事も。
…伊達だからだ…
彼だからこんなにも身体が啼くのだ…
「…は…あ…伊達…」
「…ん…」
「…好き…はあ…」
「…………」
「…大好…き…」
突然、伊達は身体を離した。
「あ!…い、いや…だ!」
離すまいとからみついてくる桃から無理矢理引き抜く。
「…はあ…あ…く…う…」
高みに向かって上りつめようとしていた身体をいきなり突き放され、桃は昂りの持っ
て行き場を失って悶えた。狂おしいほど身体が疼く。こんな感覚は今まで知らなくて、
息も絶え絶えになるほど苦しかった。
「…うう…はあ…」
「…桃…顔を見せろ…」
伊達の余裕のない掠れた声が聞こえ、乱暴に仰向きに転がされる。
声と同じく、余裕のない表情をした伊達が桃の顔を見下ろした。
昂りを途中で押しとどめるのは伊達も辛かったが、どうしても桃の顔が見たくなっ
たのである。
どんな表情をしているのか知りたくなった。
桃は息を喘がせ、病みつかれたような熱い表情をしていて、瞳は妖しく濡れていた。
欲情して伊達を求めている瞳だった。
「…伊…達…」
一度も見た事のない桃の瞳を見て、伊達は込み上げてくる欲望のままに桃の中に
入った。
「あう!」
桃は背中を大きく反らし、あまりの刺激に意識を失いかける。
波が去って意識が戻ってくると、伊達から与えられる快楽に飲まれた。
彼のすべてをくわえこまされているのをはっきりと感じると、激しく突き上げら
れる。
「…う…あ…」
また離されたくなくて、桃は伊達の首に手を回して腰に脚をからめた。
与えられる官能を受け入れ、淫らに求めて情欲に身を投じる。
伊達の動きに合わせて、桃は自ら腰を揺らした。
…まったく…良すぎなんだよ…
我慢出来ずに、激しく突き上げながら伊達は思う。
優しくするつもりだったのに、無理させたくない、と思っていたのに。
一度鎮めた火が再熱すると止まらない。
桃の内を深く抉りながら、とろけさせられるような快感を伊達は感じていた。
途中でせき止められた分、愛撫を求めて蠢く襞は強烈だった。
与えれば与える程、そこは熱く濡れて、じわりと包み込んでくる。抜こうとした
時、締め付けてからみついてくる感触にもっていかれそうになった。
こんな感覚、一度味わってしまうと溺れるしかないだろう。桃だからこんなにも
感じるのだ。こんなにも想う人だから…
知っているのが自分だけで良かった。
これからも、自分だけだ…この身体を知るのは…
独占欲も執着心も悦楽も身を焦がす程に燃え上がる。
「…桃…」
「…う…ん…」
「…お前は…俺のものだからな…」
「…あ…あ…」
「…俺だけの…」
「…く…う…」
桃は頷こうとしたが、激しく揺れる身体に、悶える感覚の中では上手く出来なか
った。
「…愛してる…」
優しい声が耳に届いて、桃は想いが満たされる幸せで、涙がこぼれるのを感じた。
ふいに周りの空気が急に重みをもってまとわりついてくる。
甘い湿度をもったそれは蜜のようで…
一つになって激しく揺れながらその中に沈んでいく。
二人は我を忘れて快楽の密の中に溺れていった。



H20.12.14

なんだかんだいっても、桃ちゃんは素直だから「気持ちいい」事は「気持ちいい」
って受け入れちゃう気がする;多分伊達は「上手い」と思うし。桃は変な劣等感も
ないし、やましい事もないから、好きな人の前ではきっと「感じてる」のを意地張
って隠したりしないだろうと;恥ずかしさはあるだろうけど。
(二人とも女性となら「経験」あるだろう、という設定で書いてます。「情事」に
対しては初めてじゃないって感じで)


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