モナリザの微笑み4

「国際電話を頼む。番号は…」
「………」
「やあ、剣だが館長はそちらにいるかな?待ってるよ、ありがとう」
英会話は伊達も分かるので、桃は同じように説明しなかった。
グラスをサイドテーブルに置くと、伊達は立っていた桃の手を引き、自分の膝に
座らせた。後ろから手をまわして抱きしめ、髪に口付ける。
「こら、伊達…やめろ…」
伊達は桃の静止の声など構わず、身体を愛撫する。
「止めろって…電話中だぞ…あ、もしもし剣だ…」
例の米国人が電話口に出たらしい。伊達は桃の項に口付けた。
「!…ちょ…い、いや、なんでもない…あの像の件なんだが、どうなってる?運
送人から連絡はきたかい?そうか無事積めたのか。それは良かった」
「………」
事件の事を聞かされていたらしい。自分より先に…
伊達は桃への愛撫を深くした。
「や…やめ…いや…ち、ちょっと犬がまとわりついてて…」
「ワン」
人の声だと分かる犬の泣き真似を伊達がわざとしたので、桃は肘鉄を彼の鳩尾に
くらわせた。
「………」
大人しくなった伊達にほっとした桃は、気をとりなおして会話を続ける。
「記者会見の準備も順調かい?そうか、ありがとう…それで、君に言っておきた
い事があるんだが…」
ちらりと伊達の方に目を向けるが、まだ大人しくしていた。
「君に預かったマンションの鍵を今度返したいんだ…悪いけど…そうじゃないよ、
君の事は好きだけど…」
その時、桃の秘部に伊達がいきなり指を突きいれてきた。
「いっ!」
衝撃に桃の身体は跳ね上がり、はずみで子機がソファの隙間に落ちた。
「…あ…あう…」
激しい衝撃の波に全身が痺れる。痺れが去る前に、伊達は指をさらに深くねじ込
んだ。
「やっ!…あ…!」
桃は口を塞ごうとしたが、伊達が手首を掴んで阻む。
数十分前まで官能に溺れていた為、反応は早かった。
痺れがなくなると激しい快感に包まれ、狂おしい程、身体が疼いてきた。
内で伊達は指を曲げてまわしてくる。
「あ!あん…や…はあ…」
明らかに情事だと分かる声を桃があげたので、伊達は子機を拾いあげた。
「悪いが、今、桃は電話に出れる状態じゃないんだ。そういう状態にしているの
は俺なんだが」
『………あんた…誰だ…』
怒りが伝わってくる声色だったが、伊達は鼻で笑った。
「誰だっていい。桃をこんな状態に出来る唯一の男だ」
『………』
電話越しに息を飲む様子が伝わってくる。
「こいつの微笑みはお前も見れるだろうが、それ以外の誰も知らない表情を見れ
るのは俺だけでね」
『………』
「今までも、そして、これからもだ。分かったな」
言いたい事を言うと、伊達はさっさと電話を切って、子機を向かいのソファに投げ
落とした。そして、目の前の桃を愛撫する事に集中する。
「……伊達…お前な…」
「…ん?」
「あれが…言いたくて…電話させた…のか…?」
「…一度、くぎを刺しておきたかったんでね」
「…お前…子供相手に…大人げ…ないぞ…」
「俺のものに手を出そうとするからだ…」
「…誰が…誰の…ものだって…?」
「お前が俺の、だ」
「あ…!…ん…」
身体をのけぞらせると、桃は後頭部を伊達の肩に乗せる格好になる。反らせたまま
で、腰を揺らし、桃は背中を伊達の身体にすり寄せた。
もっと激しい愛撫を欲してきたのだ。
分かっていながら、伊達はなかなか指を抜かなかった。
「…はあ…ん…伊達…」
指を蠢かせると快楽をむさぼろうとして締め付けてくる。桃の荒い息使いと、くちゅ
くちゅという粘着的な音が部屋に響いて、空気を淫らな色に染めていく。
「…伊達…もう…」
「指だけじゃ足りねーか?」
「…足りない…」
腕を後ろにまわして伊達の髪を掴む。
伊達が桃のローブの紐を解いて肩脱ぎに脱がせる。触れていないにも関わらず、桃
は蜜をこぼしていて、伊達の膝を濡らしていた。
「…早く…」
欲情した瞳で桃は伊達を見つめてくる。
感じている事を隠さず、蜜をこぼしながら伊達を求める桃の姿は淫美だ。
この誘惑に抗う術があるなら教えて欲しいものだ、と伊達は思った。
指を抜き、伊達はゆっくりと桃の身体を床に降ろした。
仰向けにさせ、身体を開かせる。
内股を掴んで足を極限まで広げさせると、開いたそこに自分を突き入れた。
絨毯の上で桃の身体が大きく反り上がる。
伊達の昂りが内部で暴れ、官能の波に激しく飲まれる。
「…あ…あ…伊達…手を…離せ…」
「………」
足を掴んだ手を緩めず、広げさせたまま、伊達は桃を突き上げていた。いつもより
深く抉られる感覚に、桃は頭の中が弾け飛びそうになる。
何より、縋るものがシーツも何もない事に桃は焦れた。伊達に手は届かず、上半身
を起こそうとしても、突き上げられる衝撃に身体が反って捩れてしまう。
「…く…うん…」
荒く息を吐き、絨毯に爪をたて、蛇がのたうつように身体をくねらせる。
のびた両足がつま先までピンと張り詰めていた。
「…桃…感じてるな…分かる…」
「…あ…良すぎ…る…」
「…俺もだ…」
いつも桃が男を狂わせる身体の持ち主なのだという事を思い知る。
何度、経験してもこの悦楽に溺れずにはいられない。
「……苦し…」
「…止めて…欲しいか…?」
「…駄目…だ…止める…な…」
苦しそうに身体を捻り、蜜をこぼしながら、そんな事を言う。
「…もっと…あ…良く…して…」
挑戦的な視線で伊達を見つめると、桃は自分の唇をぺロリと嘗めた。
伊達が決して拒まない事を知っているのだ。
望み通り伊達は桃の腕を掴み、乱暴な仕草で起き上がらせ、また自分の膝に乗せ
る。
重力に従って、桃の身体が沈んでは伊達を深く飲み込もうとする。激しい衝撃から
少しでも逃れる為、桃は咄嗟に足で支えようとするが、伊達が膝の裏に腕をまわし
て足をうかせたので出来なかった。
熱い昂りが桃の中に突き入り、受け止めた内奥が軋んだ。
「……!」
桃はあまりの衝撃に声も出ず、伊達の肩に縋りついて震えた。
「…はあ…あ…」
「…桃…」
「…う…ん……」
お互いの激しい呼吸を奪い合い、舌をからませる。深い口付けを交わしながら、二
人は官能を求めて身体を揺らし始める。
シャワーを浴びて乾いていた二人の身体は、すでに汗と蜜で濡れていた。
唇を離すと、お互い強い光をもつ瞳で見つめ合う。
身体だけでなく、視線でもまじわっていた。
視線だけでは耐え切れず、桃が腰を激しく遣いながら伊達の唇を奪うと、そのまま
二人は再び悦楽の終焉を味わった。

「…ふ…」
大きく息を吐き出しながら、伊達は自分が座っていたソファに背をもたせて、頭を
乗せた。
自分の膝に乗ったまま、ぐったりと身体を預けている桃の頭を優しく撫でる。
「…桃…」
「………」
「…桃…?」
「…ん…あ…」
「大丈夫か…?」
「…あ…ちょっと…意識が飛んでた…」
頭を起こす気力がまだ湧かなくて、肩に乗せたまま桃は呟いた。
伊達に頭を撫でられるのが、気持ちよかった。
「…桃…お前は、宮里翁が像を燃やそうとした事が許せないみたいだが…俺は彼の
気持ちが分かる…」
「…え…?」
「俺も…お前が他の男のものになったら…そいつも、お前も殺すかもしれねー」
桃は頭を上げて、伊達の顔を真直ぐに見つめる。
「どっかの成金コレクターみたいに、お前を閉じ込めて、俺だけのものにしたいっ
て思う時もある…」
「………」
「…仮の話だ…本気じゃねー」
「…伊達…」
「第一、そんな事は不可能だ…」
「…不可能じゃなかったら…やるのか…?」
伊達は首を横に振った。
「いいや…お前を殺すぐらいなら、俺が死ぬ…」
「また、そんな事…よせって言ってるだろ」
「二人とも生き延びるんだったな」
「そうだ。忘れるなよ」
「悪かった」
伊達はふっと口元を緩めた。
「伊達…俺は、お前が今まで出会った大勢の人の中から、俺を選んでくれた事に
感謝してる…」
「…ん…?」
「もし俺が、お前をどこかに閉じ込めて、他の誰も、拒絶すら許さない状況を作っ
て、その中でお前に愛されたとしても…それは愛じゃない…だから何の意味もない」
「………」
「俺がたくさんの人と出会って、その中で一人だけ選んだお前が、たくさんの人に
出会って、誰でも選べるのに俺を選んでくれたから意味がある」
相手の拒絶する権利を奪って得られるものは、愛ではない。服従である。
「…桃…」
「ありがとう…」
桃は伊達に優しく微笑む。
その微笑みを見た伊達は「これが本物だな」と思う。
偽者の像の薄っぺらい、綺麗なだけの微笑みなぞ、到底敵わない本物の微笑みだ。
塾生時代から、何度も伊達を救ってくれた。
自分の中の不安も、汚さも、欲望も、すべて許し、洗い流してくれる微笑み。
人々を虜にする微笑み。
伊達は桃を強く抱きしめた。
「小悪魔のくせに…」
「なんだって?」
「なんでもねーよ…」
この微笑みが、自分以外の人も魅了するのが、やっかいなところである。
「微笑みの裏の表情は、誰にも見せるんじゃねーぞ」
「ふふ…見せる訳ないだろ。お前が電話で言ってた通り、今までも、これからも、
見れるのはお前だけだ」
二人は深い口付けを交わす。桃は自分の内の伊達が変化してきたのを感じとって、
腰をゆっくりとまわし始めた。
恋人の甘い時間は、まだ終わりそうもなかった。




H21.1.1

元旦から何を書いているのかね私は…;休みの日に大量に打つべし、打つべし、精神
で書いております;
なんだか、今回は総理桃が白かったような気がします。いや、グレーか?伊達組長も
いつになく若い時みたいで。
一応、恋人としてはアダルトな組長×総理ですが、やっぱ不安になる時はあるかなって。
ちゃんと不安を桃に言える分、大人になったとは思うんですけどね;
自分の弱さをさらけ出すのは、相手を信頼しているからだし、強い証拠だと思う。
ここからちょっとアダルトなお話(15禁かも)

某映画の感想で、ある人が「絶頂に達するのは「小さな死」を迎える事である」と言っ
ているのを読んで「なるほどな〜」と、うなっちゃいました(そういえばイク(逝く)
って言うもんね。…違うだろ;)
「情事」は「生」の喜びを肉体を通じてお互い感じ合い、果てに絶頂「小さな死」をむ
かえる、という行為。だから「いっしょに死んでもいいくらい好きな人」としなきゃ意
味がないんではないでしょうか。(どちらかだけでも)
そう考えると「いっしょに果てる」ていうのも、結構大切だよな〜と思ったり。
ここらへん考えがまとまったら「雑記」にでも書こうかな〜と思っております。
支離滅裂な文章になりそうな気もするけど…;