ご注意:
このお話の設定は、某マンガの設定を拝借しております。
「この配役だったらどうなるのかな〜」と思わず妄想してしまいまして、
そこから出来たお話です。
設定は以下の通り


世界観:吸血鬼やら狼男やら、魔法なんかが出てくる中世ぐらいの時代
桃:吸血鬼を殺した事のないヴァンパイアハンター
富樫とか虎丸とか飛燕とか:桃の友人
伊達:吸血鬼と狼男のハーフ
豪毅:藤堂の助手
藤堂:ヘルシング教授みたいな研究者


読みきりです。完全に妄想趣味大爆発の話です。
以上を了承して下さった方のみお読み下さいませ。



夜の住人の塾生達


「桃〜!大変じゃ〜!」
富樫と虎丸が大声をだして家に飛び込んで来ました。
「どうしたんです?」
キッチンで夕食の後片づけをしていた飛燕がまっ先に問いかけます。
「あ、あ、あの吸血鬼が『桃はどこだ〜』って探しているぞ!急いで知らせねーと!」
「あの吸血鬼って?」
「ほ、ほら頬に傷のある凶悪な目つきをした…」
「二人ともどうしたんだ?」
書斎で本を読んでいた桃が、二人の声に気づいて出て来ました。
「あ、桃〜!急いで逃げるんだ!めちゃくちゃおっかねー目つきだったぞ!」
「いくらお前でもかなわないかもしれねー!」
「まあまあ二人とも少し落ち着いて。飛燕、二人に水をやってくれないか?」
桃に言われるまでもなく、飛燕は水の入ったグラスを持って来ております。二人はそれ
を受け取るや否や一気に飲みほしました。
「で、吸血鬼がどうしたって?」
少し落ち着いたらしい二人に桃が改めて尋ねます。
「そ、そう…以前お前がやっつけた吸血鬼がお前に会いにやってきてるぞ」
「約束通り血をもらいに来たとか、なんとか…すげー迫力で…」
「約束?」
「あの人でしょ。以前、遠くの村人に頼まれて封印した…」
飛燕が捕足します。
「ああ、伊達か。吸血鬼と狼男のハーフの…」
桃は思い出しました。

一年程前の事です。
桃を遠くから訪ねてきた村人がおりました。ハンターとしての腕を見込んで頼みがある
というのです。
実は村の近くの森に吸血鬼らしき魔物が住み始め、時に大暴れして手がつけられないか
ら、退治して欲しいと言いました。
「吸血鬼らしい?では吸血鬼とは限らないのですか?どういう事ですか?」
と、桃が聞くと、月に一度、樽一杯の氷で冷した血を捧げるよう命令されるが、誰も血
を吸われていないというのです。
血は村人が何人も少しずつ血を流して集めます。
そんな訳で、その魔物は血を飲むらしいけど、まだ一度も人を殺しておりません。
ですが、満月の夜に、決まって大暴れして森の木も畑も村も滅茶苦茶にするので、この
ままでは死人が出てしまう。その前に退治して欲しい、との事でした。
話を聞いた桃は疑問でした。
吸血鬼は人の生き血を吸って人を殺します。
死んだ人は、時に吸血鬼として蘇ってしまう事もあります。
しかし、その魔物は血を要求したり、暴れたりするけれど誰も殺しておりません。
満月の夜に暴れる、というのが桃は気になります。
確かめる為に、桃は引き受けました。
そして、その村に行き、暴れているという魔物とご対面しましたが、その魔物が伊達だ
ったのです。
伊達は吸血鬼と狼男のハーフでした。
血が欲しくなるのは吸血鬼の血筋のせいで、満月の夜に暴れるのは狼男の血筋のせいで
した。
暴れている時は理性を完全に失っているので、何も覚えていないそうです。
桃はそうした事情を知って、伊達を退治するのを止めました。
伊達自身が自分の性に苦しんでいると分かったからです。
変わりに十字架のついた首輪を伊達につけました。人の生き血を吸おうとすれば、その
十字架が火を吹くのです。
これで、万が一にも人の血を吸う事は出来なくなりました。
人の血の代わりに、柘榴の実を食べるように教えてあげます。
満月の夜に暴れるのを防ぐには、ある薬草を教えてあげました。
前の晩にこの薬草を煎じたものを飲んでじっとしていれば、無意識のまま暴れ出したり
しないのです。
「満月の前の晩に、これを作ってあげて下さい」
と、桃は村人にレシピを渡してお願いしました。
安心出来ないから早く退治しろ、という村人もいましたが、桃は根気強く説得しました。
「伊達は誰も殺していないし、殺したいなどと思っていません。
自分の血筋を呪われた血として感じ、苦しんでいるのです。
樽の中の血なんて、吸血鬼からしてみれば、泥水にも等しい味がするそうです。身体が
欲するから仕方なく要求して飲んでいたのだと、この事からも分かります。彼は決して、
自分の欲望で人の命を奪う魔物ではないのです。
畑を荒す事もなく、血を吸う事もなくなるのですから、退治する意味があるでしょうか?
それに、伊達が近くの森に住むようになってから、盗賊などが出なくなったではありま
せんか」
桃のそれらの説得に、村人はしぶしぶ納得しました。
最後に桃は
「あ、でも、どうしても血が欲しくて我慢出来なくなったら、俺のをあげるから訪ねて
きたらいいよ」
と、伊達に言いました。
呆気に取られる伊達に、桃は自分の家の住所を書いた紙を渡して、飄々と帰ってきたの
でした。

「そうか〜あの時の伊達か〜どうしたんだろ?」
「血が欲しくなったんじゃないですか?」
「ああ、そうかもな〜今の季節は柘榴の実を見つけるのは大変かもしれないし」
「き、来たぞ!」
富樫の言葉と同時に、家のドアがバンと開きました。
「桃〜ここか〜」
「やあ、伊達久し振り、元気だったか?」
富樫と虎丸の言った通り、凶悪な目つきの伊達が入って来ます。
ひえ〜と富樫と虎丸は身を震わせました。
「お前のせいで飢えて仕方ねー。約束通り血をもらうぞ」
伊達が桃の首に手をかけようとした時
「死にたくなければ、やめろ」
後ろから声がしたので、伊達は振り向きました。
そこには、太刀を抜いて構えた豪毅の姿がありました。
豪毅はこの村の大地主の若様で、剣士としても名を馳せています。
勉強の方も中央の大学に学んだ秀才ですが、最近、教授であるお父さんの研究を手伝
う為に村に戻って来ました。桃とは同じ剣の流派の修行仲間です。
今でも、二人で剣の修行をしています。お互い、やり合う実力の持ち主が他にいない
という事情もありますが、豪毅はそれに感謝していました。
桃といっしょにいられる時間が少しでも多い方が嬉しいからです。
豪毅の瞳の中に、自分に対する憎悪が感じられて、伊達は嫌でもこの男に対して闘争
心を覚えます。
この男は桃を特別な人間だと思っている
と、すぐに分かりました。
特別に思っているのは伊達も同じでした。
初めて桃に会った時から、彼の事を考えぬ日はありませんでした。
自分が負けたのも初めてなら、恐怖も嫌悪も宿っていない瞳で見られたのも初めてで
した。
しかも「彼は苦しんでいるのです」等と言い、他の者から庇うなどと…
そんな人間がこの世に存在するなんて、伊達は信じられませんでした。
ハーフで産まれたがうえに、吸血鬼一族からも狼一族からも受け入れてもらえず、い
つもつまはじきにされ、孤独でした。
伊達が心を許したのは、赤ん坊の自分を拾って育ててくれた盲目の神父だけです。
彼が亡くなってから、伊達はずっとひとりぼっちで生きてきました。
それで、いいと思っていました。
魔物の自分を受け入れてくれる人などいる筈がない、と分かっていたからです。
しかし、桃が自分の前に現れました。
飄々とした雰囲気なのに、誰よりも強くて優しくて、簡単に自分という存在を受け入
れました。
桃が去った後、伊達は桃に会いたくてたまりませんでしたが、反面、怖くもありまし
た。
魔物の俺が会いにいってもいいのだろうか…
血を吸いたい、と言ったら、嫌われるかもしれない…
嫌悪を宿した瞳で見つめられるかもしれない…
でも、伊達は限界でした。
嫌な顔をされても、退治されても、桃なら構わない。
どうしても桃に会いたくて、伊達は血を建て前にしてこの村にやって来たのです。
血では無く、桃に飢えていたのです。
もちろん、そんな事を言う気はありませんが。
目の前の男は、自分と同じ瞳をしている…
伊達と豪毅の間に無言の火花が散りました。
「豪毅、大丈夫だ」
睨み合う二人の間に桃が割って入ります。
「この男は知り合いだ。約束があって来ただけだ」
「約束?」
「ああ、前に話したろ?我慢出来なくなったら俺の血をあげるって約束したんだ」
豪毅は眉を歪めました。
「そういう事だ」
伊達は豪毅の見ている前で、桃の血を吸おうとしました。が
「ちょ、ちょっと待ってくれ、伊達!」
桃が慌てて伊達を押さえました。
「なんだ、今さら駄目なんて言うんじゃねーだろうな…」
「そうじゃないよ、ただ、その…」
「コップに入れた血を飲ませる気か?」
直接飲むのでなければ、血は死んだも同然で、泥水のような味がするのですが、伊達
はそれでも構いませんでした。目的は桃に会う事なのですから。
「そんな事はしないよ。すごく不味いんだろ?」
「………………」
血を吸われるのは自分なのに、どうして血を吸う相手の事を気づかっているのでしょ
う。
伊達は胸が熱くなりました。
「…人の目がないところがいいいんだ…恥ずかしいから…」
頬を少し赤くしながら桃は呟きます。
そういう事か、と伊達は納得しました。
血を吸う行為は、性行為と同じ感覚をもたらすのです。桃はそれを恥ずかしがってい
るのでした。
富樫と虎丸は知りませんでしたが、豪毅は知っているから、余計に嫌なのです。
「コップにいれた血にしろ」
堪えきれず意見します。
「てめえには関係ねーだろ」
「ある」
「何故だ?お前は桃の恋人か?」
「………………」
ますます、二人の間の火花が激しく散りました。
「コップの血じゃいくらなんでも可哀想だろ」
「…桃…」
豪毅の心配そうな表情を見て
「大丈夫だ。伊達は怖そうに見えるけど、本当は優しいから…」
「早くしろ、どこならいいんだ」
桃の言葉を遮るように伊達が声を荒げました。
「…じゃあ、この部屋で…」
心配そうな富樫と虎丸、嫉妬の炎を燃やす豪毅と、一人リラックスしている飛燕らに
見つめられ、桃と伊達は桃の寝室に入っていきました。
桃はベッドに腰かけ、ガクランのボタンをはずし、さらけだした喉を差し出しました。
「どーぞ」
目を閉じて少し上を向く桃は、まるで口付けを待っているかのようで、伊達はドキリ
としました。
伊達は桃の頬に手を添え、ゆっくりと首筋に口を近づけます。
なめらかな肌の感触に身体が熱くなりながら、伊達は牙をつきたてました。
「…う…」
桃が微かに声をもらします。
あふれ出る血潮が喉に流れ込み、あまりの甘美さに伊達は眩暈を覚えました。
人から直接血を飲んだのは、子供の時のわずかな期間だけです。
育ててくれた神父を失い、少しやけになっていた頃。
神父に申し訳ないと気づき、すぐに止めましたが、その時もこんな甘美な血を飲んだ
事はありませんでした。
…桃だからだろうか…
だから、こんなに甘いんだろうか…
むさぼりそうなるのを堪え、伊達は桃から離れました。
桃の顔色が青白くなっているのを見て、伊達は心配になります。
「…桃、大丈夫か?」
「…あ…ふ……」
うっすらと開けた瞳は潤んでいました。血を吸われたせいで、情欲を感じているよう
です。
熱い吐息をはいて、恍惚の表情を浮かべながら伊達を見つめています。
薄く開いた唇の間から、チラチラと蠢く紅い舌を認めて、伊達は口付けたい衝動にか
られました。
衝動のままに、伊達は桃の唇を奪いました。
濡れた舌を絡ませ、桃を蹂躙します。
「う…ん……」
意識が朦朧としている桃は、何をされているのかはっきり分かっていませんでした。
ただ、息が苦しくなったので、空気を求めて口を開けます。
すると、さらに伊達が口付けを深くするので、桃の頭の中はさらにクラクラになりま
した。
「…はあ……」
「…桃…」
伊達がもう少し先に進んじゃおうかな〜
と不埒に思った時、何かが迫ってきたので、伊達は桃から離れて後ろに飛びました。
迫ってきたのは太刀をふるった豪毅です。
後一歩、後ろに下がるのが遅れていたら、伊達の身体は真っ二つになっていたかもし
れません。現に伊達のガクランの袖口は今の一太刀で切られています。
「…血をもらうだけだろうが…」
太刀を持っていない方の手で桃を支え、激しい怒りを宿した瞳で伊達を睨みつけます。
「…そうだったな…」
伊達も負けじと豪毅を睨みつけつつ、口元を綻ばせました。
「…今日のところはこれで引き上げよう」
「……………」
次はない、と豪毅は心の中で呟きました。
「美味だったぜ…」
去り際の伊達の言葉に眉根をよせながら、豪毅は腕の中の桃に声をかけました。
「…桃、大丈夫か?」
「う…うん…」
「顔色が悪い…貧血だろ」
「…多分…」
「……………」
「…明日は飛燕にレバニラ炒めでも作ってもらうか」
ふふっと弱弱しく笑みを浮かべる桃を、豪毅は複雑な気持ちで見つめていました。

『あれが、世にも珍しい吸血鬼と狼男のハーフか〜!』
桃の家から出て行く伊達を、影から見つめる一人の爺さんがおりました。
ヘルシング教授…ではなく、魔物の研究をしている藤堂教授です。
『研究してみたい〜!欲しい〜欲しいぞ〜伊達臣人〜!』
家の中から出て来た伊達は、異様な視線を感じて悪寒を覚えたのでありました。
ゾゾッ…とな…



H21.8.19

完全にパロディというか、好き放題、次元別設定男塾関係ないバージョンで書き
ましたです;ひっちゃかめっちゃかの話ですみません;
伊達はイメージ的に狼男とかハルクって感じですが、血を吸わせたかったんで、
無理矢理ハーフになってもらいました;
この世界観で他の設定も考えておりました。その場合は、
血を吸わない吸血鬼が桃ちゃんで、桃と仲の良い狼男が伊達で、ヘルシング藤堂
教授と無理矢理助手にされている豪毅
って感じでした。
研究材料として変質者もどきの藤堂教授に捕まった桃ちゃん。そんな桃ちゃんに
惹かれる助手の豪毅。桃を助けようとする伊達
って感じで話を考えておりました〜
なんか、桃ちゃんが助けられるお姫様みたいで「むふふ…」となっていたのですが〜
まあ、今回は見送りで;