ご注意!
このお話は、組長×伊達クローン×総理です。一応3P?ですかね?
大半濡れ場です。
以上の事をご了承して下さった方のみ、及び、カミソリは送らない、
とお約束出来る方のみ、お読み下さいませ;
不快な気分になられても、責任は持ちかねます;
よろしくお願い致します。



影法師


快楽の波に身を委ねていると、桃は誰かの視線を感じた。
誰か見ている…
桃に律動を与えている伊達も気づいたようだが、一向に構わない、といった様子であ
る。
今、二人が肌を重ねているところは、伊達組の屋敷にある組長のプライベートルーム
で、その中に特別に作られた客室だった。桃以外に使う者はなく、彼の為だけに作っ
たと言っても過言ではない。
「…だ、伊達…」
桃は揺さぶってくる伊達を止めようと、理性を掻き集めて声をかけた。
「ん…?」
「…誰か…見て…る…」
「放っておけ…」
伊達は組員にプライベートルームに立ち入る事を禁じているが、桃はそれを知らない
ので、組員ではないかと疑っているようである。
ここに来るとすれば組員ではないのだ。
殺気がないから敵ではない。伊達は自分達を見ているのが誰なのか分かっていた。
「…そ、そういう訳には…あ…!」
お前はよくても、こっちはよくない、と抗議しようとした桃の言葉を遮るように、伊
達はさらに深く抉ってくる。息を喘ぐ桃に口付けるので、抗議する術を失った。
「…ん…ふ……」
深くなる恍惚に、伊達の背中にまわしていた手に力をこめ、腰を足で引きよせる。
気配が近付いてくるのを感じたのはその時だった。
いきなり足首を掴まれ、驚く間もなく、強烈な刺激に襲われて桃は仰け反った。
「あ…!」
伊達が後ろを振り向くと、そこにもう一人の自分がいた。
そいつは桃の足首を掴み、指を口に含んで弄んでいる。
もう一人の伊達は、クローンだった。
いろいろな事情があって、伊達の元に来たのが数カ月前の事である。
引き取ると決めたのは自分だが、実際もう一人の自分を間近にみるのはあまり気持ち
の良いものではなかった。時折、こいつを自分の影のように感じてしまう。
同じ遺伝子を持つ、ただのクローンだ。こいつは記憶をコピーされただけで、実際に
は何も経験していないのだ。
そうは思っても、同じ闇の部分を感じる度に不快に感じずにはいられない。まるで、
いくら振り払っても逃げられぬ過去のようだ。
彼の行為に桃が快感を感じているのが分かった。
伊達を受け入れている内が、熱く疼き、しっとりと包み込んできたからである。
桃が自分以外の刺激に酔っているのが我慢ならず、伊達は愛撫を激しくした。
「……!…」
戸惑いと激しすぎる快楽に突き上げられ、果てた後、桃は軽く気を失ってしまう。
「…は……」
ぐったりしている桃の身体を、伊達は抱き上げて、後ろから抱え込む格好で自分の膝
の上に座らせる。
「…ん…」
意識がはっきりしてきた桃が、伊達の肩にもたれてうっすらと瞳を開ける。
「…伊…達……」
伊達は容赦なく楔を再び打ち込んだので、桃は声を上げて背を反らせた。
「…あ…あ…」
伊達に背中を預けた桃は、正面からもう一人の伊達が見つめているのに気づいた。
情欲に溺れた姿を、真直ぐに見つめてくる闇色の瞳。
羞恥が込み上げてきた桃は、身を捩って伊達に訴える。
「…お、い…伊達…!」
「……………」
伊達は桃の声を無視するばかりか、桃の腕ごと抱き締めて隠せないようにした。伊達
はもう一人の伊達に、わざと見せつけているのだ。どうしてそんな事をするのか桃は
さっぱり分からない。
もう一人の伊達が近付いてくる。
危害は加えてこないと分かっているのに、何故だか桃は怖くなる。
彼は桃の張りつめた胸の飾りに唇を寄せてくる。
「…あ…!や……」
痺れるような快感が全身をかけめぐり、桃は小刻みに震えだした。
伊達に後ろから突上げられているのに、濡れた唇に愛撫されるなんて…
考えただけでも、桃の身体は熱くなって悦楽の中にとろける。
押しのけたくても両手の自由が利かず、ふりほどく程の力も出て来ない。
もう一人の伊達は、自分がどうしてこんな事をするのか分からなかった。
ただ、この男に触れたくて…自分のものにしたくて触れてしまった。
初めて会った時から、彼は心に強烈な印象を残す人だった。
『ああ、君か…はじめまして』
くったくのない笑顔を向けられて、胸が弾んだのを思い出す。
『名前は、まだつけてもらってないのか?毘沙門天じゃ駄目だろ?』
他の人に対するのと同じ態度で接してくる。
オリジナルと自分の見分けが一目で出来るのも彼だけだった。
気がつけばこの男の事を考えているのを自覚する。
そして、オリジナルが彼に口付けているのを見た時、今まで知らなかった感情に支配
された。その感情はなんであるか今も分からない。
ただ…彼を誰にも渡したくないと思う。それだけは確かだった。
膝頭を掴んで足を開かせると、もう一人の伊達は身体をいれて、閉じれなくした。
片方の胸の飾りに絡み付いていた指を下腹部に降ろし、蜜を零している桃のそこを愛
撫する。
「…だめ…あ…」
淫らな声が耳に届くと情慾が炙られるので、手を止められない。
普段の聡明な桃とは違う淫美な姿をじっと見つめる。
熱い視線を感じて射ぬかれそうだと桃は思う。けれど、どこか幼さを覚える瞳で愛し
くもある。
が、やってる事はしっかり大人の行為なので、そんな余裕はなくなってきた。
「…う…んん……」
後ろから感じるところを突かれ、昂りそうになるが、愛撫している指がそれを阻んだ。
甘い煩悶がわきあがり、激しい官能に飲み込まれる。
逃れようとしても、どちらの伊達も離してくれない。
羞恥と内奥に燃える甘美の炎に、身体が焼かれる。打ち消せない動揺がさらに熱を煽り、
蜜を溢れさせるのだ。
桃は頭がおかしくなりそうだと思った。
「…や…あ……」
「…桃…いいのか…?」
耳もとで伊達が囁きかけてくる。
「……もう……」
掴んでいた手を離して、伊達は桃の腰を抱え直した。
「!あ…ん…」
「…そんなに締め付けるな…俺がもたない…」
快感を受けている桃が、それ以上の快感を返してくる。濡れたシルクの襞が、呼吸と
共に妖しくうねった。限界が近くて伊達の声が掠れる。この恍惚にもう一人の自分が
関与しているのが腹立たしいが、止めさせようとは思わない。
「…伊達……変に…なる……」
「どっちに?」
「……え……」
「どっちに感じてるんだ…?」
「…伊…達…」
クローンが桃に惹かれているのは気づいている。
男塾に実際通ったり、桃と語り合った記憶もないくせに…
しかし、妙に納得している自分がいる。
記憶がなくても、実際に戦っていなくても、伊達は桃と出会えば心を奪われると確信し
ていた。
伊達臣人という魂が、剣桃太郎という魂を渇望せずにはいられないからだ。
けれど、どういった類の感情なのか判断がつきかねる。
友情の範囲か、恋慕の情か、欲望の対象か?
恋をしているなら、認める訳にはいかない。
が、残念ながら、クローンは完全に桃に恋する瞳をしている。
同じ魂を持つからこそ、伊達は一目で分かってしまった。
ならば、桃はどちらを選ぶ?それが知りたい。
桃は無理矢理身体を捻って、背中にいる伊達を振り返る。
手を後ろに回してそのまま優しく口付ける。
「…伊達……」
瞳を閉じて伊達の肩に頭をのせる。
…お前だけだ……
と、無言の桃の声が聞こえたような気がした。
二人の間から、恋人のもつ穏やかな想いが流れだす。
桃の身体を抱きしめると、もう一人の自分が桃から離れている事に気づいた。
この甘い空気の中で、自分は異端児であると感じたからである。
無言で部屋からそっと出て行く彼の瞳がどこか淋しそうだった。


早朝、縁側に座ってぼんやり庭を眺めていたクローンに桃が声をかけてきた。
「おはよう」
「……………」
ちらりと目をやると、風呂あがりなのか、髪を濡らした単姿の桃が笑顔で立っている。
昨夜の行為を責める気配は微塵もない。
「隣に座ってもいいかい?」
「……………」
返事がないのを了承の印とみたのか、桃は隣に腰を降ろす。
「覇極流の道場を知っているかい?」
「……………」
「飛燕が君にしばらく修行してみないかって言ってるんだけど、どうかな?」
「……………」
「そこの生活は厳しいけど結構楽しいと思うよ。師匠になる人が、君に名前をくれるら
しい」
「……………」
「もちろん、君が嫌じゃなければ、だけど…」
「……………」
「少し考えてみてくれ。じゃあ…」
立ち上がって去りかけた桃に、ぼそりとつぶやく声が届く。
「…俺はなんだ……」
「…ん…?」
「…伊達じゃないならなんだ?あいつの影か?」
記憶があっても思い出ではない。
それをクローンは本能で知っていた。
自分の歴史が自分にはないのだ。
では、俺はなんだ?なんの為に存在している?
「…君は伊達じゃないし、影でもないよ」
「……………」
「君は君だろ…?」
振り向いたもう一人の伊達の目に、桃の眩しい笑顔が写った。

数日後、伊達のクローンは覇極流の総本山に向けて旅立とうとしていた。
少々複雑な気分ながらも、組長はどこか晴れた気持ちでもう一人の自分を見送る。
「では、行きましょうか」
迎えにきた飛燕に促されて歩きかけたが、クローンは足を止めて伊達を振り返った。
「…俺はまた来るぜ」
「は?」
「ここに戻ってきて、もう一度あいつに会う。俺が俺になってな…」
思い出を、歴史を持って帰ってくる。自分という人間になって…
クローンは不敵な笑みを浮かべて出ていった。
『あいつ』が誰の事なのか、伊達は分かっている。
「…あの、野郎……」
不敵な笑みを見て、つくづく自分は他人に不愉快な思いをさせる人間らしい、
と自覚する伊達であった。


H.21.9.1