本編のおおまかなあらすじ

相葉影嗣(あいば かげつぐ) …二十一歳、刈谷道場の門弟、相葉家の次男部屋住み
福田謙次郎(ふくだ けんじろう) …三十六歳、刈谷道場の師範代
伊井正太郎(いい せいたろう) …三十三歳、刈谷道場の師範、門弟達の師匠
刈谷新左ェ門(かりや しんざえもん) …三十四歳刈谷道場の本来の持ち主
刈谷勝之進(かりや かつのしん) …新左ェ門の父
刈谷九郎兵衛(かりや くろべえ) …新左ェ門の祖父で福田の師
相葉宣高(あいば のぶたか)…二十九歳、相葉影嗣の兄で相葉家の跡取り
堀田 …刈谷道場の門弟で相葉の友人
橋本 …刈谷道場の門弟で相葉の友人
曾根崎 …刈谷道場の門弟で相葉の友人
平川彦蔵 …謎の剣客
牧村親成(まきむら ちかなり) …刈谷道場の門弟で相葉の友人
牧村加代 …牧村の妹
静 …相葉宣高の妻
幸太 …十六歳 刺客を生業とする一団の殺し屋

 相葉影嗣という二十一歳の剣士は、道場の師範代である福田謙次郎に
恋慕の情を抱いていた。
三十六歳の福田は道場で初心者を相手に稽古をつけている剣士で、優し
くて穏やかな彼は門弟達に尊敬されるというより、年上の友人として好
かれていた。
その剣の腕は並なものだろうと皆は思っていたが、彼は「水月」という
普通の人間では会得できない秘密の剣を継いでいた。その剣は雪華とい
う神剣を帯刀し、人では絶対に適う事のない剣であった。
相葉は八年前のある夜、福田と刈谷新左エ門という剣士が果たし合いを
しているのを偶然見てしまい、その時から福田に囚われていたのである。
その時の決闘で破れた刈谷新左エ門は、武者修行の旅に出たきりだった。
いろんな事件がある中、相葉は福田に告白し、無理矢理身体をつないだ。
福田は相葉に惹かれる自分を意識しながら、彼の為に自分は去るべきだ
と考えていた。
そんな折り、福田は命を狙われ毒をもられる。相葉のおかげで解毒剤を
手に入れ一命はとりとめた。
同じ頃、相葉の兄であり家督相続人だった宣高が突然死し、旅にでてい
た刈谷新左エ門が帰ってくる。
宣高が死んだ原因は、相葉を慕う兄嫁の静が呪ったせいであった。
静はお腹に宣高の子を宿していたが、相葉の妻になりたかったのである。
宣高さえいなくなれば、相葉と祝言があげられると、正気を失って呪い
殺したのであった。
それを知った相葉は家を出奔する決意をする。
別れの挨拶に福田の元を訪れたが、福田はいっしょに連れて行って欲し
いと言う。
毒のせいで自分の命は長くない、と悟った福田は、残る人生を相葉と過
ごしたいと思ったのである。
二人は隣町で待ち合う事にして一端別れるが、一向に福田はやって来な
かった。
実は刈谷新左エ門に切られ、遺体は雪華の剣とともに滝に沈められたの
である。
相葉は刈谷新左エ門を切り、気を違えてしまう。
そのまま死のうとしていた相葉だったが、彼の元に雪華の剣が舞い戻っ
てくる。そこには福田の魂が宿っていた。
相葉は福田の魂とともに生きる決意をし、熊野の地へ旅立った。

申し訳ございません…;
『虎落笛』本編で最後相葉が旅立つのは『出雲』になっておりますが、
『熊野』に変更させて下さい。
地理的に無理がございましたので…
まさか続編書くとは思ってなかったので…申し訳ありません〜;